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過失相殺と最終損害額

過失相殺と最終損害額

過失相殺とは

過失相殺とは、損害賠償額を算定するにあたって、被害者側にも何らかの責任、つまり過失があるときには、その賠償額を減額させることをいいます。当事者間の利害を調節し、損害の公平な分担を図ろうとするのが過失相殺制度です。
交通事故の場合、加害者の一方的な過失による事故ということも、もちろんありますが、多くの場合被害者にも過失があるのが通常であり、示談交渉でもっとも問題となるのが被害者の過失割合になります。
すなわち、この過失割合がいくらになるのかによって、賠償金額は大きく異なります

例えば、死亡事故で1億円の損害が認められたとして、被害者に4割の過失があると認められれば、認められる損害額は、6000万円になります。これを仮に1割でも2割でも被害者の過失を減らせれば、1000万?2000万円の違いがでてきますから、被害者の過失がどの程度認められるかは極めて重要な問題になるわけです。

この過失割合については、裁判で過失相殺をするか否かは、裁判官の裁量に任せられていますが、大量の交通事故を迅速かつ公平に処理するために一般的・客観的な基準が求められており、実務で参考にされている資料が、「判例タイムズ16号民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準」になります。
この資料は、多くの事故態様を類型化して、基本過失割合を定めていますが、様々な修正要素を加味して、最終的な過失割合を決めることになります。

修正要素としては、次のものがあります。

  1. ?幹線道路か否か
  2. ?夜間などの見通し状況
  3. ?大幅な速度超過の有無
  4. ?商店街か住宅街か
  5. ?被害者が老人か子供か
  6. ?著しい過失や重過失はないか

この過失相殺を有利に主張するためには、証拠を用いて立証することになりますが、この立証資料として最も重要かつ客観的な資料としては、刑事事件で用いられた実況見分調書になります。
この実況見分調書については、刑事事件として起訴され、事件が終結し確定した場合はもちろん、不起訴となった場合でも、実況見分調書の閲覧をすることはできることになっていますので、本人でも良いですし、弁護士に依頼してもよいので、是非とも訴訟提起の前に、実況見分調書を確認して、被害者側の過失が軽微であることの確認とその主張立証方法をまとめておくとよいでしょう。

 

損益相殺とは

事故により損害を被り、他方、利益を得ている場合には、損害から利益を差し引くというのが損益相殺です。この損益相殺の対象になるか問題となるのが、各種健康保険、国民年金保険、労働者災害保障保険となります
判例では、これらの社会保険を損益相殺するかどうかは必ずしも統一されていませんが、社会保険について保険金を被害者に支払い後、その給付額を加害者に求償できる場合に損益相殺を認めているようです。
例えば、労災では、政府が保険給付をした限度で加害者に求償する旨の規定が適用される休業補償、療養補償、遺族補償年金などは損益相殺が認められていますが、求償規定のない障害特別支給金、休業特別支給金などは、損益相殺の対象になっていません。

 

過失相殺と損益相殺の先後関係

そして、過失相殺と損益相殺の先後関係によって、損害額が変わってくることになるわけですが、判例は、損害総額について過失相殺した後に保険給付額を控除すべきであるとする過失相殺後控除説を採用しています。
これとは別の考え方が、損害総額から保険給付額を控除した後の損害額について過失相殺すべきであるとする過失相殺前控除説になります。
例えば、1億円の損害で、労災からすでに1500万円の補償金と、自賠責保険から3000万円の保険金がでており、被害者に4割の過失があるとします。

過失相殺後控除説の場合(判例)
1億円×(1?0.4)?(1500万円+3000万円)=1500万円

過失相殺前控除説の場合
{1億円?(1500万円+3000万円)}×(1?0.4)=3300万円

このように、過失相殺後控除説の方が、認められる損害額が低額になりますので、いっそう過失相殺率での争いは重要になってきます。

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